しなやかなこころで、

臨床心理士Hecoのひとりごと

PTSD対策専門研修Part2~PTSD症状の鑑別と治療~

みなさん、お疲れさまです!

 

今日でブログ開設後、ちょうど3か月が経ちました。

この記事でちょうど40記事目になります。

ぼちぼちのペースで続けられてるかな、って感じです(^O^)

 

こんな弱小ブログの読者になって下さっている方もおられることに感謝多謝です。

いつもありがとうございます。

 

今後もできる限りわかりやすく、精神疾患のことや心理士のことを書いていけたらと思います!

 

 

さて、前回はPTSDの基本について書きました⇓

 

www.cpheco.xyz

 

今回は、鑑別と治療についてです。

 

冒頭で「わかりやすく」とか言っておきながら、今回は少し専門性が高くなってしまうので、わからないところは飛ばしちゃってください(^_^;)

 

ただ、あまり詳しく書きすぎると、治療過程に影響が出る可能性もあると思うので、さらっと書きますよ~

 

 

症状の鑑別

PTSDの諸症状は、PTSDに由来するものと、そうでないものとの鑑別が難しい場合があります。

 

前回の記事でもご紹介した主症状3つの鑑別のポイントを、具体例をあげつつみていきたいと思います。

 

1.侵入症状(フラッシュバック)

 ⇒①記憶の中での対象に対する恐怖

 ≠全般性不安(不安対象への不安)、恐怖症(現実対象への不安)、妄想反応(妄想内容への恐怖)など

 

 ⇒②体験の情動記憶の再現であり、予期・コントロールができない

 ≠原因のある想起(Ex.「裁判の時に思い出してしんどくなる」「普段は忘れているが現場の近くを通ると苦しくなる」など)

 

2.回避・麻痺症状

 ⇒無意識のうちに、出来事と関連した刺激を避けたり、記憶や感情を切り離すこと(健忘や解離性同一障害、離人感など)

 ≠適応的な回避(Ex.「意識的に回避し、そのことで不都合が生じていない」「忘れるよう努力し、実際に忘れていられる(記憶のコントロール性)」など)

 

3.過覚醒症状

 ⇒交感神経系の持続的な過緊張、時にパニック発作

 ≠ストレス体験と無関係な症状(Ex.アルコールやカフェインの影響、恐怖症等に伴うパニック発作、事件前からの不安性障害など)

 

併存疾患

PTSDは、うつ病などその他の精神疾患を併存しやすいと言われています。

 

併存が見られやすい疾患は以下のとおりです。

 

うつ病

 ・罪責感(Survivor's guilt)…災害などで自分だけ生き残ってしまったことに対する罪悪感(Ex.「子どもも夫も死んでしまった」「あそこでああしていたら」「私だけ生き残ってもしょうがない」「一緒に死ねばよかった」)

 ・無力感や将来への希望の喪失

 ・活動意欲の低下、ひきこもり、自殺リスクなど

 

全般性不安障害

 いろいろなことが気になって、自分ではどうしようもできないほどの不安に陥り、夜も眠れない。そんな不安や心配が班年以上も持続している状態。

 

〇恐怖症

 特定のある一つのものに対して、心理学的、生理学的に異常な強い恐怖を感じてしまう状態。

 

〇妄想反応

 誤った揺るぎない信念を示す反応。その信念が明らかに間違いであるという証明をしてもなかなか修正されることはない。

 

〇錯乱

 思考や気持ちが混乱して取り乱す状態。

 

〇アルコール依存

 回避行動として飲酒などを続けているうちに依存してしまうケース。

 

〇その他の疾患の顕在化

 認知症統合失調症躁鬱病など、これまでは顕在化されてこなかった疾患が、ストレスやPTSDの症状によって顕在してしまうケース。

 

 

 

治療方法

基本的には現在現れている症状に対して薬物療法をしつつ、トラウマに対する心理療法を行っていくのがよいとされています。

 

心理療法としては、持続的エクスポージャー療法、EMDR、CPT、認知の再構成などが効果的とされていますが、エビデンス*1があると言われているのは持続的エクスポージャー療法です(諸説あります)。

 

持続的エクスポージャー療法

エクスポージャー療法とは行動療法のひとつで、暴露療法とも呼ばれます。

 

不安や苦痛を克服するため、患者が恐怖を抱いている物や状況に対して、少しずつ、あるいは突然に、直接的に、あるいは間接的に向き合うことを求める技法です。

 

そして、持続的エクスポージャー療法とは、トラウマに関連した、患者が恐れているもの、状況、記憶やイメージに、繰り返し安全に向き合うことで、病理的で適応的でない不安や認知を軽減するためにデザインされた技法です。

 

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要するに、面接場面という安全な場所でトラウマと向き合うことによって、患者が恐れているような結果はもう起こらないということそのような恐れが非現実的であることを認識させる心理療法と言えます。

 

セッション回数は大体10回ほどです。

 

具体的に行うこととして、トラウマ歴の聞き取り、治療原理の説明、呼吸法の説明、PTSD症状についての心理教育、宿題の実施、現実エクスポージャー、想像エクスポージャーなどの手続きがあります。

 

この辺りを詳しく説明すると、もしどこかで治療を受ける際に影響してしまうかもしれないので、このくらいでさらっと終わっておきます(^_^;)

 

EMDR

Eye Movement Desensitization and Reprocessingの略で、訳すと『眼球運動による脱感作と再処理法』となります。

 

なんのこっちゃって感じですね(笑)

 

2013年にNHKで取り上げられ、広く知られるところとなりました⇓

 

www.youtube.com

 

ぼくは、正直詳しい治療機序はわかっていないのですが、治療者が指を左右に動かし、眼球運動を促すことで、脳内のトラウマ記憶が活性化され、少しずつ変化していくそうです。

 

治療中はトラウマ記憶を思い出すことになるわけですが、エクスポージャー療法と同様、『今現在いる場所は安全なんだよ』という感覚とトラウマ記憶を結びつけることで、トラウマ記憶が想起されても症状や不安が起こることがなくなっていく、ということだと思います。たぶん…・

 

日本EMDR学会が認定する、EMDRの専門家であることを示す資格もあるようです。

 

その資格を取るためには、

心理療法を行う専門家としての資格を持っており、最低2年間の臨床経験があること。また、認定EMDRレーニングを修了しており、少なくとも50セッション以上のEMDR治療の経験があること。認定コンサルタントから20時間のコンサルテーションを受けていること。さらに、2年ごとに12時間以上の継続研修会への参加をしていること。

 が必要だそうです…結構大変そう…

 

資格の申請費用は15000円。2年ごとの更新が必要だそうですが、その都度10000円…

 

詳しくは日本EMDR学会のHPをご覧ください⇓

https://www.emdr.jp/

*1:科学的根拠、証明