PTSD対策専門研修Part1~PTSDの基本~
みなさんお疲れさまです。
先週は少し暖かかったのですが、今週末はかなり冷え込むみたいですね(^_^;)
家から出ない選択肢もありか…(笑)
さて、先月、国立精神・神経医療研究センターが主催している「PTSD対策専門研修」に行ってきましたので、復習がてらに記事を書きたいと思います!
東日本大震災以後、一般にもかなり知られるところとなったPTSDですが、言葉が一人歩きしてしまっている印象も受けます。
なので、今回はPTSDの基本を書いていきたいと思います!
まずは目次です。
PTSDとは
Post Traumatic Stress Disorder の略で、心的外傷後ストレス障害と訳されます。
強い恐怖感を伴う経験の記憶が、時間が経っても深い心の傷として残ってしまい、様々な症状となって現れてしまう障害のことです。
このような強い恐怖感を伴う経験による心の傷を『トラウマ』と呼びます。
トラウマになりやすい体験の例としては、事故や災害などで命の危険を感じたり、自分ではどうしようもない圧倒的な強い力に支配されたり(虐待や性暴力被害)といったことが挙げられます。
トラウマの定義
心理学的にはトラウマは本人の主観で判断されるとされていますが、PTSDは医学的な診断であり、その定義も医学に基づいたものが使用されます。
すなわち、
実際にまたは危うく死ぬ、または重傷を負うような出来事に暴露される、および/または性暴力被害に遭う
という定義です。
要するに、心理学とは違い、客観的に『死や重傷のリスクが実際にあったかどうか』『性暴力被害に遭ったかどうか』ということが重要ということですね。
PTSDの主な症状
では、PTSDは具体的にどのような症状を呈す障害なのでしょうか。
大きく3つに分けられます。
①侵入、フラッシュバック(再体験)
⇒苦痛な体験の記憶が、あたかも現実のようによみがえり、当時と同様の苦痛を感じること
注意したいのは、そのことを『考えてしまう』ということではなく、実体験として再び経験してしまっているという点です。
思考ではなく、経験です。そして、その再経験によって、恐ろしい記憶がさらに強化されてしまいます。悪夢も含みます。
ちなみに、このフラッシュバックという概念は覚せい剤乱用とPTSDのみで使われるそうです。
②過覚醒
⇒常に危険が続いているかのような張りつめた状態のことで、些細な物音などにも反応し、パニック状態になりやすくなります。
イメージとしては、心の外側に大きなバリアを張って過剰防衛している感じです。
具体的には、怒り、興奮、不注意、集中力の低下、入眠困難、驚きやすさ、などが該当します。
上記の症状が原因で対人関係にも困難が生じることも。
③回避・麻痺
⇒苦痛な体験が思い出させられることを避け、記憶を意識から切り離すしたり、感情が鈍化し、自分の感情がわからなくなったり、意思や意欲が減退してしまいます。
過覚醒と比べると、一見平静に見えるため、心的衝撃を受けていないかのように見えることもあります。
例えば、
「もう何も感じていない」
「大丈夫大丈夫、すっかり忘れたから」
「本当は元々大したことなかったの」
などは、本人も気づかずにトラウマを押し殺している発言である可能性もあります。
「え、そんなことあったっけ?」
と本気で忘れてしまっているケースもあります(解離性健忘)。
また、意識的な回避もあります。
例えば、交通事故の被害に遭った人が、事故現場に近寄らない、車に乗らない、などが一例になります。
上記のような症状は、あまりに強い心的衝撃を回避したり、感情を鈍らせることで精神状態を守ろうとする防衛反応とも言えます。
ASDについて
Acute Stress Disorderの略で、急性ストレス障害のことです。
PTSDはその原因となるストレスイベントが起きてから、1か月以上経ってから様々な症状が表れる障害ですが、ASDは1か月以内に種々の症状がある人につけられる診断です。
しかし、実際は1か月以内に医師の診断を受けるケースはそう多くないので、ほとんど使われることはないそうです。
余談ですが、PTSDを主訴として医療機関にかかる人はそう多くはありません。
本人もPTSDと気付いていないケースも多いですし、性暴力被害のケースでは、自身の体験を話したくないという人も当然多く、医療機関に繫がる人は1割程度というデータもあるそうです。
PTSDはうつ病や不安障害と併存していることが多いため、そちらでかかることが多いようですね。
根本にトラウマがあるのであれば、そちらに焦点を当てることが根治のために必要な場合もあるかもしれません。